(NEW!)湯布院私のお気に入りスポット(No.5)山のホテル・夢想園「まだ名前のないサロン」

April 6, 1997 : 大分市:永野美恵子

分の桜は満開から散り初めに入りましたが、湯布院への道はまだまだ桜がきれいでした。それに何より山桜のきれいなこと、山肌が桜のピンクでポット染め上げられている様は何とも言えません。そんな春の宵、「ゆふいんの春サロンコンサート」のお誘いがあり出掛けました。会場は湯布院、山のホテル夢想園の出来たばかりのサロンです。そこでお披露目を兼ねてのヴァイオリンのコンサートです。

由布の駅を過ぎて湯布院盆地に入る手前、盆地の斜面を利用して木立の中に夢想園の建物や温泉場が配置されています。石畳の通路を下がっていくとレストラン、その下が新しく出来たサロンでした。ガラス戸を開けると正面に大谷石の暖炉、そして左右の大きなスピーカーが目を引きます。暖炉の上にはきらりとひかるイコンが左右に飾られている。

夜のコンサートに合わせてすでにホールは椅子が並べてあるが、その椅子は安楽椅子であったり、ソファーだったり、気楽な1人懸けの椅子だったり様々、その横の棚には本が一杯並んでいる。暖炉にあたりながらの安楽椅子での読書は最高でしょうね。その前にうとうとしてしまうでしょうか。カウンターバーもしつらえてあって、ワイングラスが一杯並んで今夜のパーテイーを待っている。

日の演奏者は一昨年のゆふいん音楽祭に出演して下さったアガーテ弦楽四重奏団のヴァイオリン奏者の大森潤子さん、音楽祭の事務局長の加藤昌邦さん、真樹子さんご夫妻と一緒に入って来られる。ああ、今夜の演奏が楽しみ。 私は福岡から手伝いに駆けつけた音楽祭スタッフの大河内君と一緒に受付のお手伝いをする。彼はお医者様、ラットを使っての実験をしたりもするそうだ、忙し過ぎて趣味のビオラの練習がなかなか出来ないと嘆いている。

想園のおかみさんが来られる。かすりの仕事着がきりりとしている、真っ白の足袋に白い鼻緒の草履がお客さまをおもてなしするお気持ちを現しているようだ。「ここは物置だったのですよ。それがこんな素敵なサロンに生まれ変わって本当にうれしい」とおかみさん。太い柱を生かして、少し低い天井を圧迫感を感じさせない横の線を強調した造りは昌邦さんの設計。「物置の中にジッと立ってぐるっと見回し、一晩で構想が出来上がったよ」とこれまたうれしそうな昌邦さん。

たここの総支配人の秋永氏は大の音楽好き、レコード鑑賞の話になるともう身体を使ってのお話になる。イコンのことをお尋ねする。ギリシャからやってきたイコンだとか。この倉庫の中に新聞紙に何重にも包れておいてあったとか、生まれ変わったサロンに居場所をみつけ、この中の出来事をジッと守って下さっているようだ、どんな経緯でここにやってきたのか、御主人の亡くなられた今は知る人もないとか。

ールの椅子が全て埋まり、40人近い人が入られた。黒いドレスの大森さんのバイオリン演奏が始まった。ホールの低めの天井が良く音を響かせている。つややかなバッハのソナタ、うっとりと聞かせるパガニーニの曲、色々なテクニックを駆使したイザイのソナタ、本当にこの新しいホールの門出にふさわしい清新な演奏でした。

ンポンといい音でワインの栓が抜かれて乾杯!パーテイーが始まりました。 あちこちで楽しげなお話の輪が出来ました。ヴァイオリニストの大森さんと良くあんなに手が動きますね、魔法の指ですね、、と指を見せて下さる。弦を走る指先はカチンとしていて、針があたっても痛くないですよなんて言われていた。

ろいろな方々とおしゃべりをしました。 ことこと屋の美砂子さん、市役所の直子さん、志美津旅館の美智子さん、 玉の湯の溝口さんご夫妻、 亀の井別荘の中谷健太郎さんや太郎君、銀行員の佐藤さん、由布院美術館に勤めている志手さん、空想の森美術館の高見さん、みんなゆふいん大好き、音楽大好きの皆さんです。 小雨の中、ひっそりと咲く山桜、春の宵はいつまでも素敵なメロデーに包まれていました。

由布院温泉  山のホテル・夢想園”まだ名前のないサロン”  
                    電話:0977-84-2171   Fax:0977-85-4281 
ゆふいん音楽祭