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2000年5月18日、別府の鉄輪温泉へ、   by Mie
 
風薫る5月、その言葉通りの緑の風がさわやかな土曜の朝、私達は挟間町、庄内町を抜けて城島から由布岳の麓へと緑に染まりながらの快適なドライブをしました。由布岳に登っている人の車もたくさん駐車場にありました。
私たちは、由布岳からUターンして今日の目的地、別府の鉄輪温泉にやってきました。今夜の宿は、お寺の奥にある旅館・温泉閣です。
永福寺の大きな看板には「日本一蒸湯開基」と書いてあります。この時は何を意味するのかまだわかりませんでした。
お堂の奥に、立派な玄関がありました。蒼い風を受けながら大きく開いた玄関は来るものを拒まずという感があります。
二階の広い和室に通されましたが、すぐに旅館のぞうりをつっかけて散歩に出ました。

旅館のまえは、「いで湯坂」という細い坂道になっています。私はこの坂道を歩くのは初めてなので、何もかもが珍しい。
旅館の隣は広場になっていて、そこに「元湯」がありました。この温泉は組合員の方専用になっています。
「元湯」のお向かいは観光客も入れる「渋の湯」です。建物はまだ新しいです。料金は??と捜しましたが書いてありません。
無料なんでしょうか?
さらに古めかしい建物がありました。窓は全て目隠しされた建物の角には「市営・鉄輪むし湯」と書かれています。入り口にまわってみました。
新しい石碑「一遍上人開基、市営蒸し湯」フムフムお寺の大きな石柱の文字と同じことが書かれている。

大きな由緒書きの看板を読んでみました。「鎌倉時代(建治2年)時宗開祖一遍上人、九州行脚の折、鉄輪は八丁四面の大地獄であったので、大蔵経の一字一石をもってこれを埋め当時瀬戸内で盛んに行われていた石風呂の手法を取り入れこの蒸し湯を設けたという。敷き詰められた石菖の薬効と蒸気が溶け合って、神経痛、リューマチ、関節炎などに特効がある。蒸し湯は別府を代表する名湯であると共に古代から中世にかけての日本の一般的な入浴法であった、石風呂の風習を残す文化遺産です。」

管理人のおばさんに蒸し湯を覗かせてもらい、入り方を親切に教えてもらった。しかし、蒸し湯を見るのは初めてでした。床に60センチ四方位の木のドアがついていて、そこを開けると熱風が顔に吹き付ける。奥の草のしきつめられた部屋で熱気を浴びながら寝ているというのが入り方だそうです。

 
話を聞いて、さあ、どうしようかな?とまた歩いていくと、おせんべいやさんがありました。香ばしいいい匂いがしてきます。さっきまで焼いてたんですよ、とお茶とおせんべいを持ってきて下さる。柚子味噌の香りのおせんべい、おみやげに買いました。そして蒸し湯に入った?と聞かれる。やっぱり入らなくっちゃ。
着替え用に持ってきていたTシャツを着て蒸し湯に引き返しました。入湯料180円を支払って、教えられた通りにタオルを1本持って小さな木のドアを開け、這って奥の部屋へ。ガタンとドアが閉まる、もうほのかな明かりしかない、熱気に満ちた小さな暗室です。丸い石が並んでいる、その上にタオルを置いて草の上に寝ます。タオルがずれると、「アチチ」頭が熱い。Tシャツを着ていますから敷き詰められている石菖は気にはなりませんが、とにかく熱い、そして低い石の天井、四方から押し寄せる熱風。動悸がしてくる。逃げ出す元気だけは残しておきたい、と思うともう居たたまれない。這い出して木のドアを開け外の廊下にしゃがみ込んでしまった。その間、1分。夫は3分で飛び出して来た。
体中から汗が出ている、温泉に入って洗い流す。冷静になると、これは体にいい蒸し湯だと分かった。今度はもう少し長く寝ていよう!
旅館に帰って飲んだビールのおいしかったこと。

 
非常なカルチャーショックを受けた蒸し湯体験だった。何だかとてつもなく別府は奥が深い気がし出した。そしてまた旅館のぞうりをつっかけて、散歩ならぬ探検に出かけました。
大きなビルです。毎日、1時と7時に新歌舞ショーが開かれているとか。丁度、昼の部が撥ねた所で、ロビーまでお芝居の役者さんが見送りに出てきています。このお客様はなかなか去り難い様子でした。
温泉情緒というのでしょうか。旅館の浴衣に半纏をまとった人たちが三々五々、路地を歩いています。
路地の奥にも旅館がたくさんあります。そしてその旅館の看板には「入湯、貸し間、民宿、旅館」とたくさん書いてあります。そして、路地には八百屋さん、お土産やさん、骨董商、いろんなお店が並んでいます。軒を見上げるとツバメが巣を作っていました。かわいい雛がお母さんツバメを待っています。
まだまだ路地裏探検は続きます。ゴーゴーシューシューと大きな音、見ると元泉タンク、配管の修理をしていました。
いで湯坂にあるこの素適な建物は「上人湯」です。側に「HOPE賞」の看板がありました。これは町作りに貢献したことを称えて別府市から贈られる賞だそうです。
また機会があったら入ってみたい温泉です。
古き良き時代の人と人のつながりが今も生き続けている鉄輪温泉いで湯坂界隈を歩いて帰って来ると、温泉館の廊下では長いドレスを着たアンテイックドールが静かに迎えてくれました。




続く

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