韓国の歴史
その2・高句麗の建国
やがて、紀元前108年に古朝鮮が滅びたあと、朝鮮半島の北部から旧満州にわたって鉄器文化を持つ、いろいろな部族国家が登場します。その中には、今の長春にあった、扶餘(ぶよ)という国もありました。

高句麗の歴史は、その扶餘から始まります。高句麗を建国した東明聖王の名は朱夢、彼は後で、自ら高という苗字を名のり、高朱夢とよばれるようになります。

東扶餘には、ヘブルという王がいました。そしてヘブルの父は天の神の息子であるヘモス、へブルはカエルのような金蛙(クムワ)という子どもを授けられて育てる。また河の神であるハベクの娘、ユファは卵を産み落とし、そこから高句麗を建国する東明聖王、すなわち朱夢が生まれる。卵から生まれるとはどういうことでしょうか。
韓国の神話では、高句麗、新羅、加羅の建国者は、みんな卵から生まれています。卵から生まれたというのは、父がいなくて、捨てられたという意味です。王子であれば、国を受け継げばいいのです。しかし捨てられたから、新たに建国することができるのです。韓国の神話の特徴は、捨てられたという設定、それが卵として表現されています。
朱夢という名前の意味は何なんでしょうか。弓の実力が優れた人の代名詞です。それは遊牧民としての特徴や闊達さ、気概、征服性を強調する意味の名前です。
朱夢は幼いときから、 優れた才能を持ち、それに焼きもちを感じたクムワ王の長男のデソは、父に朱夢を殺してしまうように提案します。そこで扶餘から逃げ出した朱夢は、ゾルボンに行って、都を開きました。ゾルボンとは、今の中国の黒竜省の一帯です。彼は鉄器文化を持つ強力な軍事力を持って、周辺地域を征服し、ついに高句麗を建国しました。
その時、彼は22才。紀元前37年のことです。
朱夢、彼は扶餘の生まれ育ちですが、扶餘人ではなく、天と水の脈を引き継ぐ神の子孫でした。そうした神話の背景には、天を恐れ、水の神聖さを崇拝する人々を集め、その強力な新しい勢力のリーダとなったのでしょう。そして、ただの神話だけではなく、乗馬や弓に長けていた戦争英雄の征服による政治統合が勇敢な国、高句麗を開いたのです。
その1、歴史の始まり その3、三国時代の幕開け・百済と新羅の誕生