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4月13日、播州素麺「揖保の糸」資料館『そうめんの里』を訪ねました。 by Mie

  

手延べそうめんとして全国に有名な「揖保の糸」発祥の地、竜野市神岡町の素麺神社を望む地に立派な資料館「そうめんの里」があります。私の実家の出身地(姫路市林田町)に近くお墓参りの帰途によってみました。そうめんの加工場からそうめんのレストランまで備えた立派な施設です。ここではそうめんのことなら何でも分かる仕組みになっています。
   

まずは、そうめんのルーツを訪ねます。
B.C7000年頃にメソポタミア地方で小麦が出来るようになり、B.C1000年ごろ回転臼が出現すると小麦の生産が世界で広まりました。エジプト、中央アジア、シルクロードを伝って中国へ石臼とともに小麦が伝わったのはB.C300年頃といわれています。そこで、「水引餅」というのが作られていた、これがそうめんのルーツのようです。やがて、遣唐使と共に日本へ伝えられました。
小麦粉文化は世界に広がっていますが、麺文化は、イタリアとアジアが主というのは面白いですね。右の写真は麺に油を塗って延ばしているラーメン作りの様子です。
さて、播州でそうめん作りが盛んになったのは、1750年ごろの江戸時代からです。竜野藩の許可業種として奨励されていました。しかし、もっと遡ると室町時代(1418年)の文献(揖保郡太子町斑鳩寺・寺院日記)に「サウメン」という文字が出てきてその頃からこの地で食べられていたことが分かります。
昔の素麺は宮中でのおもてなし料理だったようですが、中世にはお寺での点心となり、やがて江戸時代、庶民の口にも入るようになりました。その頃のそうめんは切らない長いままだったようで、腰の強いそうめんは食べるのに苦労したようで、首に巻いたり、立ちあがったりと大変だったことが絵に残っています。
何故、この地方で素麺作りが盛んになったのか、いろいろな要素があります。播州平野と言われるこの地で小麦や綿の生産が盛んだったこと、すぐ近くに赤穂の塩田があり良い塩があったこと、写真の中央の地図に見られるように、川がたくさん流れていて軟水の良い水が豊富だったこと、そして冬に晴天の日が多いというように、そうめん作りの原料と条件が揃っていたことが挙げられます。
   

昔ながらの作り方が、お人形を使って展示してあります。左は、「細目作業」といって、乾燥を防ぐための綿実油を塗りながら麺を細くしていく作業です。右の写真は、昔のそうめん作りの道具がいろいろ展示されている様子です。
   

近代になって機械がいろいろ導入されたとはいえ、やはり手延べそうめんという呼び名の通りに手作業の部分がたくさんあります。ここは、乾燥作業を実体験出来るコーナーです。10センチ位の長さで熟成されたものを、この写真のように2メートルの長さにまで延ばします。よりがかけられ、腰の強いそうめんは、さばくのが大変です。たった一流れ体験しただけでジンワリと汗をかいてしまいました。

お天気と相談しながら、冬の寒い朝の4時、粉をこね始め、5度の熟成を経て商品検査を受けるまで36時間、手の抜けない作業を経て完成する播州手延べ素麺「揖保の糸」です。
この資料館には、加工場も併設されていて、見学が出きるようになっています。ひなた干しをされたそうめんが、19センチの長さに切りそろえられて、ここで、箱詰めされて梅雨の期間を熟成倉庫で保管され暑い夏に「揖保の糸」として出荷されます。

この地方のそうめんが日本中で愛されるようになったのは、いちはやく(1865年)組合制度を導入して「揖保の糸」というブランド名をつけて製品の質を守りながら出荷して行ったことが大きいと思います。
   

左の写真はいろいろなそうめんの種類です。中央上が標準のそうめん、そして、長いもの、色をつけたものといろいろあります。
右の写真は資料館の売店で売られている素麺です。小さな木箱に入っているのは、1年間寝かせた「ひね」と呼ばれるよりおいしい素麺です。上の飾りは横綱といって、素麺で作ってある縁起飾りです。
これは、素麺のおめでたい時の食べ方で、「鯛そうめん」といいます。この地方の結婚式のごちそうの最後にはこの鯛素麺が出されたということです。
私たちもおそうめんを味わうことにしました。冷たいそうめんが主流ですが、播州では、温かい素麺、煮うめんという食べ方も盛んです。
手前は、冷そうめんのセットです。大きなどんぶりに入っているのが煮うめんです。
この地方は薄口醤油の有名な産地でもあり、とても風味豊かなおそうめんを頂くことが出来ました。昔からよく馴染んでいた素麺ですが、この資料館でいろいろ学ぶことが出来ました。

是非、皆さんもこの資料館を訪れてみて下さい。そして冬のカラリと晴れた日にこのあたりを散策されると、農家の庭先に真っ白なそうめんがたくさん、干されている珍しい乾燥作業を見ることが出来るでしょう。

そうめんの里 : 兵庫県竜野市神岡町奥村56番地   Tel. 0791-65-9000(代)

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