インターネットによって広がる生活

永野美惠子(54才)

mieko@fat.coara.or.jp

http://www.coara.or.jp/~mieko/miehome.htm

私は50代の専業主婦です。一人息子は東京で暮らしていまして主人と二人で大分に住んでいます。

朝、起きたら主人がパソコンのスイッチを入れ回線につないで、「あ、、今朝はノルエーとアメリカからメールが来ているよ」主人は朝食のコーヒーを点てながらざっと目を通します。私は朝食片付けをして楽しみに読みます。ノルゥエーの北極圏の友達は、(今はもう毎日、薄暮の世界、来年の2月まで太陽は出ません。)という便り。アメリカの友達は私と同じ年くらいの女性で学校の先生、家族や友人との話とよく気があう。先日、息子が結婚したいと思う女性を紹介しに帰って来たとメールを書いたら、(結婚式はいつ?花嫁さんは伝統的な和服かしら、お色直しは何回するの?)って便り。洋の東西を問わず、関心事は同じだなと本当におかしくなる。

 

我が家は現在、2台のパソコンを LAN で結んで使っています。

 

私たち夫婦が友人にすすめられてパソコン通信を始めたのは今から6年前です。今時、ワープロくらい出来なくてはねと思っていた矢先、友人からパソコン通信も出来ると聞いて早速ワープロを買ってコアラに夫婦で入会しました。年齢や性別、職業を越えたフランクな付き合いにすっかりパソコン通信が楽しくなりました。実名主義というコアラの考え方も本当に気に入ってオンライン、オフラインを通じて一杯お友達が出来ました。

 

このCOARAの歴史を簡単にお話します。今から12年前に現在も事務局長である尾野さんを中心にデータベース蓄積を目的として始められた団体です。このパソコンネットワークというものがデータベースよりも人の気持ちを伝えるコミュニケーションの手段として向いているということに気がつき今日のCOARAがスタートしたと聞いています。最初から実名主義、そして「ネアカ、前向き、ハキハキ」をモットーとしている団体です。私はそんな考え方がうれしくて毎月の例会にも出席するのが楽しみでした。

 

その中でインターネットという言葉を聞くようになったのは4年前位でした。そしてやがて、コアラがインターネットにつながりました。すぐにIDをもらいましたが、ワープロでは絵も写真も出てきません。テキストばかりです。本当にはやくパソコンがほしいなと思いました。そんな時、コアラ事務局の開いて下さるホームページ作成勉強会などに訳もわからないままに出席してはへーー、マウスって本当にねずみみたいな形だと感心をしていましたが肝心のホームページの作り方はチンプンカンプンでした。

 

半年後、主人の誕生祝いとして我が家にパソコンが来た時には本当にうれしかったです。そしてパソコンと共に、コアラの若い友達もいっぱいやってきました。パソコンをいろいろいじってくれて設定をしてくれてインターネットが出来るように教えて下さった、画面に写真や絵が出てきた時の感激を今も忘れることができません。分からなくなった、動かなくなった、、何かあるとすっ飛んで来て下さるコアラの若い友達、いつしかパソコンを背にビールのジョッキをにぎっている、そんな楽しい時間がいっぱい続きました。

 

そしてすぐに我が家のホームページを作りたいと思いました。実際に作り出すとあの訳のわからなかった講習会が大変的を得ていたものだということがわかりうれしくなりました。大分に住む主婦が作るホームページだから、大分の自然が感じてもらえるようなそんなホームページにしたい、ホームページは英語もつけよう、ホームページ、見たよっていうメールにはすぐに返事を書こう、度々見てもらいたいから次々と更新をしよう、主人も英語で全面的に協力をしてくれることになり、そして我が家のホームページはスタートしました。95年5月のことでした。

 

http://www.coara.or.jp/~mieko/miehomej.htm

http://www.coara.or.jp/~mieko/miehome.htm

 

大分の我が家から見える、由布岳(湯布院町)鶴見岳(別府市)をスケッチして毎月更新する、我が家の庭に今、咲いている花をスケッチして載せる、お気に入りのお菓子の作り方を図で分かりやすく載せる。ボランテイアで夫婦で関わっている「ゆふいん音楽祭」の情報を載せる、そんな形で続いている我が家のホームページです。

 

我が家のホームページは主人が英訳してくれることで、外国からたくさんのメールがくるようになりました。(あなたのホームページの山や花を見ては慰められています)という北極圏の友人。(こんなお菓子も作るといいよ)とレシピを送ってきてくれるオーストラリアの青年。(ここの表現はこう書く方が分かり易いですよ)と英文をチェックしてアドバイスをして下さるアメリカに永年お住まいの日本人の方々や日本語を勉強しているというアメリカ人。(日本語ではこういう場合は何ていいますか)と聞いてきて、メール上で日本語教室になり、日本の企業に受かってしまったという香港の若者、(ゆふいん音楽祭は楽しそう)と言ってとうとう聞きにきてしまったアメリカ人。

 

http://home.earthlink.net/~jedunning/japanculture.html

 

仕事で東京に帰ってきました、一日、休みがありますので大分へ行っていいですか、)ということで湯布院や我が家で貴重な日本の休日24時間を過ごしたニューヨークの日本人。我が家の息子より頻繁に我が家に来るアリゾナの青年、この青年のことを私たちはアメリカの息子と呼んでいます。またお正月には来るそうです。また、ニューヨークの高校のメンターになって欲しいとのメール、何のことかと思ったら、高校の日本研究の授業のメンター、我が家のHPも参考になっているそうです。

 

http://mbhs.bergtraum.k12.ny.us/ip.html

 

いろんな方がメールを下さいます。私が忙しい忙しいと工業展のお手伝いをしていた日々のことです。メールから素敵な音楽が流れてきました。イライラしないで落ち着きなさいということでしょうか。ヘンデルのハープコンチェルト、とてもうれしかったです。声のメールも時々はやりとりをします。今はインターネット電話とネットミーテイングのテストをしている所です。地球の裏の人と、声のやり取りがパソコンで出来るということも不思議な感じがしています。

 

こんなふうにインターネットを通じて世界中に友達がいっぱい出来ました。そして我が家にもやってきます。そんな時、いつもコアラの事務局を訪問したりしてコアラのお友達にもいっぱい会ってもらっています。また、音楽好きの皆さんが集まってパーテイーを開いて歓迎をして下さることもあります。

 

ホームページの私のマウスで描く日本の子供の遊びや季節の行事に郷愁を感じて下さる日本の方や、私の日記から日本の主婦の暮しを興味深く読み取って下さる外国の方、花の絵や私の好きな湯布院のスポットを見て、大分や湯布院を好きになって下さる方、毎日、そういう方々とのメールの交換が楽しみです。主人が英訳をしてくれるお陰でこちらの英語力はちっとも上達しないのが悩みの種ですが、夫婦で同じ友達が持てる幸せを感じています。

 

ホームページやメールを使っての楽しみの他に、生活する上での便利なことというのもたくさんあります。旅行をする時には飛行機の時間を調べたり、チケットの予約をしたり、検索で尋ねる場所のホームページを探してみておくことも今はもう当然のことになりました。パソコン通信でどこどこへ行くって話しましたら、たちまちそこの情報を書いて下さるというのもうれしいことです。勿論ホームページのURLも教えて下さって大変助かります。

 

我が家の生活で今、変わりつつあるのが、アルバムです。今までは写真を写してはアルバムにはって、そんなアルバムが押し入れの中に一杯積み上げてあります。それが今は、パソコンの中にアルバムができています。今年の春、パソコンがクラッシュして写真も消えてしまってバックアップの必要をひしひしと感じてMOを入れたのですが、今は本当にたくさんの写真が入っています。

先日も息子が帰省した時には最近のアルバムということで、パソコンで見せました。説明も書いてホームページ形式にしていますが、忙しくなると写しっぱなしということで、やっぱり整理っていうのは何でも大事だなと感じている所です。

 

インターネットショッピングもこれからは段々楽しみになると思います。まだ実際に購入したのは、パソコンくらいのものですが、アメリカやフランスのカタログを送ってもらい、見るのも楽しみ、そしてカタログから注文をして買ったりもしています。

 

そんなことをしていますと、たまにはお仕事をしませんかというメールも入ってきます。ホームページを作る仕事だったり、絵を描くことだったりですが、考えて考えてはやっぱり責任が負いかねる、パソコンにこれ以上時間が割けないなどと結局はお断りしてしまっています。もう少し若かったらさっとしているのかなーーと思っていますが。

 

本当にパソコンでいろんな世界が広がってきています。

 

こんな楽しいインターネットをもっといろんな人が出来るようになって欲しいとインターネットを知らない友達を招いては見てもらったり、またコアラ事務局が開く「女性のためのインターネットティーパーテイ」のお手伝いをしてインターネットを始めたい女性の方のお手伝いをしたり、コアラのインターネット放送の取材のお手伝いをしたりしています。今日もデジタルビデオを持ってきましたのでどうぞ取材にご協力をお願いします。

 

http://www.coara.or.jp/cybergirls/index.html

http://www.coara.or.jp/StreamWorks/sw.html

 

10月は大分市の工業展の中に大分市の要請でインターネット体験コーナーを作ったコアラブースにボランティアで詰めていました。明後日からあります別府湾会議(11月11日~13日)もコアラスタッフとして先月から準備会議に度々出席してきました。明日は外国人ゲストを大分空港まで主人と迎えに行くことになっています。

 

インターネットで女性の世界もひろげましょう、楽しいですよ、大分にいて楽しいことが一杯ある、大分の隣がアメリカだったり、北海道だったり、そんなことの出来る大分が大好きです。住んでいる町が大好きということは大分に活力が増してくるということにならないでしょうか。

 

そんなお話をしに今年は札幌と諏訪に行って参りました。マルチメディアで町おこし村おこしということがどこも大きな課題になっていますが、住んでいる町が楽しい、といえることがその一番大事なことではないでしょうか。誰でもが快適に楽しめる環境作りを是非お願いしますとお話をして参りました。

 

ホームページもいろいろ内容も膨らんできて、我が家の日記、近くの田んぼのルポ「お米の出来るまで」という観察日記も作りました。

 

テレビや新聞から毎日のように情報がはいってきます。それと同時に世界の各地から友達の体を通した情報が寄せられます。世界地図を広げたり、大分や日本の歴史を尋ねられて図書館に行ったり、興味や視野が広くなります。(アメリカの男性は家事もよくしますね、)と書くと(いえいえ、する人はするけれどしない人もいますよ。)と、多様な捉え方、男性とか、女性とかで括るのではない、一人の人として個性を重んじる大切さを教えられます。

 

パソコンに向かう時、パソコンの向こうにやっぱり生きている人がいるということを常に感じます。主人は今、被爆体験を静かに語られたある方(故人)のページの翻訳を手伝っています。国内はもとより、海外からたくさんの感想が寄せられています。原爆を落とした国、落とされた国、と思うのではなく、人であるなら、その良心を揺さぶる言葉は世界共通なのだということを強く感じています。

このページにも、原爆ドームの絵を描かせてもらいましたがこの度、インターネットをまだしていない方々もこのページを読みたいということで今度、本になりました。表紙の絵も描かせてもらい、その絵を見る度に心が引き締まります。 本を出版したからホームページでお知らせするというケースは一杯ありますが、ホームページが本になったというのは本当に珍しいことではないかと思っています。このページも先程話しました、ニューヨークの高校の教材になっています。

 

http://www.coara.or.jp/~ryoji/abomb/e-index.html

 

毎日、時間をみつけては、マウスで絵を描き、ホームページを作り、友達にメールを書いています。世界の友達と心を通わすことが私たちに出来るささやかな世界平和の第一歩ではないかと思いながら。そしてインターネットを通じて人の輪の広がる生活、そしてそんな生活の出来る大分を素敵な町だなと思いながらパソコンに向き合う毎日です。